第123回中材業務及び滅菌技法研究会報告



ホームページをご覧の皆様こんにちは。
いつも研究会にご支援、ご協力いただきありがとうございます。
第123回研究会は、雪がちらつく中、参加者476名、展示メーカー34社が集いまして盛会に終了いたしました。ご参加いただきました参加者の皆様、展示メーカーの方々本当にありがとうございました。



毎年年度末の研究会では、研究発表の場とさせて頂いています。今年は5題の発表がありました。演者の方々本当にありがとうございました。



1.『電力使用量節電を目指した滅菌方法の選択』
大阪市立大学医学部付属病院 植田真由美氏
2.『滅菌器材のやり直し物品の推移と考察』
日本ステリ株式会社(委託先)大阪市立大学医学部付属病院
中央材料部 久保誠氏
3.『中央材料部で出来る3R(Reduce・Reuse・Recycle)活動』
大阪市立大学医学部付属病院 中央材料部 正松本悦子氏
4.『不動在庫の視点から見た診療材料の適正管理』
大阪市立大学医学部付属病院 中央材料部 花房陽子氏
5.『WHO手指衛生モニタリング直接観察による手指衛生遵守状況の評価』
中井記念病院・奈良県立医科大学大学院医学研究科感染病態制御学
(医学博士課程)在学中 久留野紀子氏

近年は入院患者や手術件数の増加に伴い、中材の業務も増加している傾向にあると思います。技術の進歩に伴って新しい医療機器や医療材料が増え、一方で不動材料も生まれてきます。特に大規模な病院では需要と供給が増える中、眼が行き届きにくく物品管理で死角になる部分もあるのではないでしょうか・・
そんな時に、「これは無駄ではないか?」、「自分たちにできることはないか?」といった現場スタッフからの前向きな発言には私自身本当に力をもらいます。

発表の一つに、不動在庫の視点から見た診療材料の適正管理について報告がありました。不動在庫と併せて金額を提示し、定数の見直しをされていました。演者の方も話しておられましたが、大学病院のような大規模病院の特殊性から、必要とする診療材料は日々大きく変化し、「足りているか」、「不足しているか」の判断が難しく、また過剰よりも不足に対する懸念が強い傾向があります。
診療材料は高価なものが多く、無駄にすると大きな損失につながりかねません。

今回の発表を聞き、定期的な調査と見直しが必要なことを改めて感じました。またSPD担当者や部署とのコミュニケーションにより物流に関する理解が深まったとのことで、信頼関係の構築から多くの副次的メリットも生まれてくると思いました。

永遠の課題である手指衛生の発表では、WHOが提唱した手指衛生の必要な5つの場面を直接観察法によってモニタリングした結果の発表がありました。

手指衛生が必要な場面は本当にたくさんあります。実施率を挙げる努力をしている中でWHOの5つの場面はとてもシンプルで現場にとって分かりやすい手法だと思いました。

私も手指衛生を現場に促す立場にありますが、その一方で現場から具体的にいつ実施したらいいのか・・・?という質問を受けることがよくあります。

例えば、気道分泌物の吸引については、『吸引ダイヤルを回して圧を設定⇒吸引カテーテルを取り出して連結管に接続⇒吸引の実施⇒吸引チューブの廃棄』という一連の流れがある中で、手指衛生はいつするの?といった質問です。

防護具の着脱も当然セットになってくると思いますが、こういった現場の日々の疑問に答えて解決に導くことで、一人でも多くのスタッフに手指衛生の実施を促し、遵守率向上を目指すためにも、実施状況を観察する意義は大きいと思います。

多大な労力を要しますが、実施状況の直接観察とフィードバック、スタッフとのディスカッションなど地道な活動を継続的に行うことが必要なのだと感じました。大変貴重なデータのご発表をありがとうございました。



『米国感染管理研修に参加して〜事務職から見た知見〜』
医療法人永広会島田病院予約センターセンター長島田永士氏



1.『減圧沸騰式洗浄器』
三浦工業株式会社メディカル西日本営業部 メディカル大阪営業所 小石純司氏
2.『低温蒸気ホルムアルデヒド滅菌(LTSF)併用の高圧蒸気滅菌器』
ゲティンゲ・ジャパン株式会社ヘルスケア事業部
製品管理部部長兼品質保証責任者 高野剛氏



1.『感染対策の“ホンマでっか!?”日常業務でこんなところ気をつけてください〜』
2.『手術器械の汚れ・シミ、錆の原因と対策およびメインテナンス』
特定非営利活動法人日本感染管理支援協会 理事長 土井英史氏

今回のトピックスの一つに、汚染のあるチューブ類や内腔のある吸引し管、ラパロの鉗子等が鋼製小物と同時に洗浄できる洗浄器の報告がありました。専用ラックや内腔器材のノズルへのセッティングも不要、超音波洗浄も不要、とのことで大変驚きました。
洗浄器等の医療機器にはメリット・デメリットがあると思いますが、大変画期的な器械だと感じました。
自施設の洗浄物の量や種類、洗浄に伴うランニングコスト、従来の洗浄器や洗浄方法(器械・用手など)を踏まえて、今後洗浄器購入の際の選択肢の一つとしていきたいと感じました。



一日を通して当研究会会長であり特定非営利活動法人日本感染管理支援協会理事長の土井英史氏より2つの講演をして頂きました。



新たに“ホンマでっか!?”という関西人ならではのギャグを盛り込んだ楽しい内容でした。土井先生の講演はいつも楽しく学ぶことができます。日々の業務に追われ疲れがたまっている方、モチベーションが下がっている方、先生の熱意と活気のエキスを是非もらいに来ませんか?!

今回は手術器材のメンテナンスの重要性についてご講演頂きました。洗浄や滅菌をカンペキにしても、器材のメンテナンスがしっかりできていなければ感染管理に加え、医療安全的にも大きな問題が発生します。
土井先生がいつも言われるように、メンテナンスは器材の専門知識が必要であるのと同時に、人の目で確認する作業になり、多くの時間が必要になります。

今回の演題発表にも多くありましたが、業務の効率性や無駄な業務の削減、経費の削減を目指し、私の施設でも十分にできているとは言い難い器材のメンテナンスなど、重要で必要な業務をできるようにしていきたいと思います。



この日は、他の学会と重なりましたが、多くの展示・広告メーカーの方々にご協力いただき、大変感謝しております。本当にありがとうございました。










我々研究回では、Q&Aコーナーを行
っています。

こんな質問がありました。
・中材の床の洗浄方法はどうしたらいいのか?
・新しい病院に移転する際に、滅菌器材をどのように搬送したらよいか?
・アテストの結果を待たずに器械を払い出すことがあるのですが・・・
・自施設のOPと外来で使用している器材の滅菌時間を変えているが統一したい。滅菌時間はどれくらいがよいか?
・高圧蒸気滅菌に使用する水は水道水でよいか?
などなど・・・

よくよく話を聞くと、答えは分かっているのだけれど、それをどうやって病院の管理者に伝えたらよいか、どうやって周囲の人に説明すればよいか・・・等悩まれていました。
正しいやり方や答えはないかもしれませんが、ディスカッションすることで解決策のきっかけになればとてもうれしく思います。また、私たちも皆さんから施設の状況や考え方等多くの情報を得ることができ、本当にありがたく思います。皆様のお役に立てるよう頑張りたいと思いますので、日頃の疑問を一緒にディスカッションしませんか・・


新改がレポートいたしました。