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149回中材業務および感染対策研究会 / 事業報告
     
  研究会副会長 土井英史 
(特定非営利活動法人日本感染管理支援協会 理事長)
 
     
 
新型コロナウイルス感染症の指定感染症が外れていない最中において、プログラム作成時は開催日の3か月前であり、皆様へのご案内に関しては2か月前にご案内ができるようにしておりますので、開催をどうするのかを随分と役員で議論してきましたが、この研究会自体が“感染対策”と“滅菌供給”を主としていることもあり、役員それぞれの持てる知識を存分に活用して対策を取り、また、状況が最悪のことも考慮して中止も視野に入ながらの開催でしたが、無事開催できることになりまして役員一度安堵いたしました。

今回は、このようなコロナ禍の状況下にも関わらず『141名』の熱心な参加者の方々にお集まりいただき、また、企業の方々にも多大なるご協力をいただき17社の企業展示をしていただきました。参加者の皆様、企業の皆様本当にありがとうございました。しかしながら、組織として出席できない方など色々な理由で参加できない方々への対応として、講師の先生方のご承諾も得て、今回初めて研究会として後日Web配信(10月17日(土)~10月31日(土))を行うことにいたしましたので、当日お越しになれなかった方々是非ご覧いただきたく思います。

私も長年、滅菌供給や感染対策のことの教育や実践指導を実施しておりますが、今回それぞれの先生方のお話を伺い、今更ながら学ぶべきことがたくさんあった研究会となりました。それでは簡単ではありますが、その講演内容につきまして報告させていただきます。
 
 

会場風景



医療機器展示

 

 

トピックス
2020年 AORN & IAHCSMMのバーチャルカンファレンスの概要

特定非営利活動法人日本感染管理支援協会 理事長 土井 英史

私はAORN(周術期看護師協会、例年4月開催)、IAHCSMM(国際医療セントラルサービス資材管理協会、例年5月開催)の学会には毎年参加しており、当研究会の年3回定期開催の最初(5月or6月)の研究会でトピックスとして報告させていただいておりますが、コロナの影響でご多分に漏れず今年度の両学会共に中止となりました。しかしながら、両学会共にバーチャルカンファレンスが開催されまして、その中の教育講演のセッション(AORN;33本中17本参加、IAHCSMM;12本中4本参加)に参加して、その内容をトピックスとして今回報告させていただきました。

AORNでは手術室での新型コロナウイルス感染症対策のお話も当然ながらありましたが、それ以外のことも日常的に実施しなければならない中で、ガイドラインの変更点や日常業務で気をつけなければならないことなどについてピックアップしてお話させていただきました。一方、IAHCSMMの方も多岐に渡る内容の講演がありましたが、その中でも『洗浄:人的要因』の内容が腑に落ちましたのでこの内容を詳細に今回は報告させていただきました。講演終了後、この後ご講演しただく高階先生から『全ての項目について詳しく聞きたいですね』とコメントをいただきましたので、参加者の皆様にもうまく伝わってご興味を持っていただけたのではないかと思いました。
 

 

特別講演1
医療機器再生業務の質保証 ~滅菌技師/士、ガイドラインなどについて~

大阪大学医学部附属病院 手術部・臨床工学部・材料部・サプライセンター
病院教授 高階 雅紀先生

高階先生には、当研究会の年度初めに毎年必ずお越しいただきまして、日本の滅菌供給部門のオピニオンリーダーとして、日本の現状や将来などについてお話していただいておりますが、今回は滅菌技師認定委員会委員長としてのお立場からのご講演をしていただきました。第1種滅菌技師、第2種滅菌技士の現状や事業内容についてのお話でしたが、私は興味深かったのは2016年WHOが出した『Decontamination and Reprocessing of Medical Devices for Health-care Facilities』を翻訳作業中であり、これを日本でお披露目していただけるというありがたい事業に感銘を受けました。また、日本医療機器学会の『医療現場における滅菌保証のガイドライン』が2020年度に改定されるということで、その内容について色々とお話してくださいました。特に滅菌バリデーションの課題を示され、それを実践現場でどのように克服して行くのかを具体的に記載してくださるようで、実践現場取ってはとてもありがたいことだと思いました。さらに、滅菌供給部門施設の設置要件も記載予定だそうで、これを記載していただけることで設計段階から設計図に盛り込まれることになることは、この領域に働く方々にとっては朗報だと思いました。皆さんもご存じのように、先生のお話は非常にソフトで分かりやすく、また、いつも“実践現場目線”をお持ちの先生でありますので、実践者の方々には心強い限りですね。
 

 

情報提供
環境表面の“ノータッチ除染テクノロジー”
今回ご紹介いただく“ノータッチ除染テクノロジー”に関しては、米国のみならず、英国においても既に実践現場で広く用いられている2つのテクノロジー『紫外線装置』と『過酸化水素装置』をご紹介していただきました。

日常の清掃・消毒に関してのリスク低減と言うよりは、今回のCOVID-19の時にも対応できますが、病棟での耐性菌や感染症のある患者さんの退院時、あるいは、手術室でも同様な患者さんの退出時など、次の患者さんへのリスク低減を目的とした“強化清掃・消毒”の一環として利用されることがあります。なぜならば、病室や手術などの清掃・消毒は、人海戦術が主ですが、人はエラーしますし、忘れることもありますので、それを補完する“工学的感染制御”として利用価値が大きいわけです。但し、あくまでも従来の清掃・消毒の『補完』ですので、従来の清掃・消毒を割愛して、このテクノロジーだけを使用すると言うものでもないことは、色々なガイドラインや論文にも記載されています。今回情報提供していただいた企業以外にも、同等な商品はあると思いますので、詳細はそれぞれの企業にお尋ねいただきたく思います。


1. 紫外線装置

株式会社モレーンコーポレーション 関西支社 支社長
山本 崇
 
     
 
 

2. 過酸化水素装置 

株式会社ティ・アシスト 中部営業部 営業課 課長代理
川島 良
 

 

招請講演
新型コロナウイルス中等症専門病院として経験した様々な問題点

大阪市立十三市民病院 病院長
西口 幸雄先生


皆さんもマスコミ報道などでご存じの大阪市立十三市民病院 病院長の西口先生にご登壇いただきまして『新型コロナウイルス中等症専門病院として経験した様々な問題点』についてお話していただきました。

私は個人的には若かりし頃、先生とは一緒に手術に取り組んだなどの経緯もあり(実は控室ではそのお話に花が咲きましたが…)先生のことは存じておりましたので、是非、当研究会でその苦労話を病院長のお立場としてお話していただきたく招聘したところ快くお引き受けいただき大変感謝しております。

さて、今回のいきさつを時系列に沿って、病院内、病院外の対応などお話をいただきましたので、その経緯が大変良く分かりました。お話の内容はここに語りつくせませんが、いくつかのキーワードがあったと思いました。感染対策だけではないですが教育の重要さは誰もが理解できるところですが、特に感染対策では“実践”してこそ初めてその効果が発揮され、患者さんのみならず職員も同様に安全を担保できることから、トレーニングの重要性を垣間見ました。そして、改めてゾーニングの重要さを参加者の皆様にお示しいただいたのではと思いました。しかしながら、そこでも重要なのが物理的にどうしようもないことも実践現場では多々ありますので、それを如何に知恵により克服するのかと言うことも教えていただいた気がしました。風評被害は本当にたくさんあったようですが、それよりも増して人々の激励が何よりも職員皆さんの助けになったことをお聞きして、今回の新型コロナウイルス感染症で、一部の心無い方々の為にギスギスした人間関係になってしまった大変な状況で、西口先生のお人柄だと思いますが、その大変な状況下でも粛々と患者さんの為にご尽力されているお姿を見ると、何だか心が温かくなる思いがしました。

参加された方々もきっと同じ思いをされた方もおられたのではと思いました。同じ大阪の人間として、西口先生をはじめ、全ての病院職員の皆様に感謝申し上げたいと思います。

 

 

特別講演2
新型コロナウイルスとの闘いは始まったばかり

奈良県立医科大学附属病院 感染症センター センター長・病院教授
感染制御内科 部長 感染管理室 室長
笠原 敬先生

今研究会の最後に特別講演2として『新型コロナウイルスとの闘いは始まったばかり』と題して笠原先生にご登壇いただきました。先生には以前にこの研究会にお越しいただき、色々とご教授いただいた経緯もありまして、大変お忙しい中お越しいただくことができました。大変感謝しております。先生のお話は、全国のCOVID-19の現状と、先生がご尽力されている奈良県での実情についてと、診断や治療についてのお話を盛り込み、また感染制御のお話も含み、そして、前の演者の西口先生のお話と重複することなくご配慮いただきながらのご講演をしてくださいました。また、特に先生が中心となってご尽力されておられる奈良県立医科大学附属病院の感染症センターが、地域の中で果たす大きな役割のお話は今後の日本の感染対策に対して、示唆する内容が多く含んでいたものと思いました。先生のお話を聞いて、特に地域に関しての感染対策は問題のある時だけ集まってディスカッションするのではなく、常日頃から色々な方々と“顔の見える形”でのコミュニケーションが、今回のような緊急事態の時には大きな役割を果たすのでなと、私は肌でその大切さを痛感いたしました。先生は謙遜してお話されておられましたが、これも先生のお人柄と行動力、そして、何よりも地道に継続されているご尽力の賜物でないかと感じた次第です。先生のお話を聞いていて、知識、技術などは当然ながら大切なことは誰しも分かるのですが、結局、どのような難局であっても、それを乗り越えていくのも人間ですから、この人と人との繋がりは、時間をかけて“育んでいかなければならない”と言うことをご教授していただいた思いがし、また、それでないと地域の感染対策は成り立たないんだなと強く感じたご講演でした。
 
 
 
 
 
     
     
  以上